St. Vincent’s Hospitalでの仕事はじめ|高原 真吾

この度2021年8月よりオーストラリアはシドニーにあります、St. Vincent’s Hospital, Sydneyでclinical fellowとして修練を行うことになりました。今回の留学の話は私がカナダでの研究留学中に臨床留学への移行を模索していたときに、齋木教授からご提案いただきました。本施設は世界でも有数の移植施設であり、心停止ドナーからの心移植でも先駆的偉業を成し遂げている施設として知名度の高い病院です。今回私が臨床留学することにより、教室員の今後の留学に勢いがついて東北大学心臓血管外科がさらに発展することにつながればという思いで、来させていただくことにいたしました。
英語資格試験であるILETSの基準を充足した後の臨床留学準備期間には、COVID-19 pandemic下での就労ビザ申請に必要な時間と、研究生活から臨床生活への移行のためのリハビリの必要性から、東北大学関連病院の宮城県立こども病院で就労することになりました。留学でいついなくなるかわからない私を辛抱強くぎりぎりまで就労させてくださった崔部長はじめとした同門の先生方に助けられてこの留学を始められたと感謝しています。
何とか8月中旬にシドニー入りを果たしました。シドニーはロックダウンが続き、家具を買うこともできないので、家具付きのアパートを数軒みて即日即決しました。これまでの海外経験でこの辺の度胸と判断力は養われた気がします。すぐさま病院へ赴きシドニー着後4日で勤務開始となりました。
北米と同じで外科医の仕事は手術です。術後ICUはintensivistsが見てくれるので、ICUで申し送ったら仕事完了です。病棟は一応回診しますが、病棟の仕事はjunior registrarとよばれるいわゆる研修医が全部やってくれるのでドレーンを抜くタイミングなどを指示する以外は問題が起こったら相談される程度で特に仕事はありません。
これを書いている時点で働き始めて2週間になりますが、すでに様々な経験をさせていただいております。すべて1助手もしくは2助手になりますが、冠動脈バイパスはもちろんHeartmate3装着, Sutureless valve, MICS MVPなどをはじめとして、心移植は3件(うちDCD=心停止後ドナー心移植2件)、肺移植2件、日本では経験できていなかった心肺同時移植1件を経験し、今後、特に移植に関しては噂通り本当にたくさん経験できそうです。
同僚にも大変恵まれ、senior registrarとほぼ同立場で仕事をさせていただいていますが、非常に親切でいろいろ助けてくれます。また日本人の先生もたいてい常にいるようで、現在ももうひとりフェローの先生およびほぼconsultantの先生もいらっしゃって、困ったことがあればなんでも聞ける環境でとても助かっています。また、Staffも含め結構な割合で日本語を少し話せるというのは北米にはない近さを感じることができます。噂では学生時代第二言語で日本語を取る人が多いということです。とにかく日本人贔屓な方が非常に多く、先人たちが築き上げてきた功績だと思いますので、そのイメージを壊さないよう一生懸命頑張りたいと思います。

シドニーでの生活環境ですが、市民の健康志向が高く公園で運動や器具を持ち込んで本格的に筋トレしている人たちがとても多いです物価が高い街ではありますが、なんとか工夫しながら生きていきたいと思います。
私の2度目の留学に対して、直接的・間接的にご支援いただいている教室員の皆様に心より感謝し、帰国後には得たものを少しでも還元したいと考えておりますので、今後とも宜しくお願いいたします。