オタワより|鷹谷 紘樹

2020年1月より,University of Ottawa Heart Institute, Division of Cardiac Surgery, Biomaterials and Regeneration Research LabにPost-doctoral fellowとして留学させて頂いております.オタワに来てから1年以上となりますが,新型コロナウイルス感染症の拡大による混乱にもだいぶ慣れ,落ち着いて毎日の生活を送れるようになりました.
 さて当研究室では,様々なバイオマテリアルを用いた心疾患の治療に関する研究を行っています.近年,単独の細胞を用いた細胞治療の効果が限定的であることが様々な臨床研究によって明らかになりつつあり,バイオマテリアルを細胞の足場として併用した細胞治療が注目を集めています.私は前任の細山先生の研究を引き継ぎ,幹細胞とバイオマテリアルの併用療法について研究を行っております.ここオンタリオ州ではこれまでに3回の緊急事態宣言が発令され,フルタイムで実験を行うことができない状況が1年以上続いております.ラボの他のメンバーとの関係は非常に良好で,このような状況でも互いに協力し合いながら短い時間で最大限の結果が得られるよう取り組んでおります.さらに教科書分筆や学生の実験指導など様々な機会を与えて頂いております.ラボのメンバーはそれぞれの目標達成のため意欲的に研究に取り組んでおり,その効率的な研究遂行能力には目を見張るものがあります.私も日々刺激を受けております.思うように実験を進められない日々が続きますが,今後一つずつ結果を積み重ねて形にしていければと思います.
日常生活でも学ぶことが多くありました.カナダは移民の国(5人に1人が移民)であり,様々な文化や価値観に触れることができます.「カナダ人は優しくて穏やか」とよく言われますが全くその通りで,その点では日本より居心地の良さを感じております.オタワでは日本の文化に機会はほとんどないため,こちらに来た当初はやや寂しい思いもしましたが,今ではこちらで知り合ったインド人家族と週末を楽しく過ごしております.幸いこちらで奨学金を獲得することができたため,留学前に想定していた極貧生活は免れることができました.慎ましくも豊かな時間を家族で過ごすことができ大変満足しております.
さて,本原稿執筆時点でオタワは3回目の緊急事態宣言を発令中です.自由に身動きがとれない日々が続いており,速やかな感染収束を願うばかりですが,このような状況下でも研究結果を残せるようさらに研鑽を積んで参ります.最後に,このような貴重な機会を与えてくださった,齋木教授をはじめとする同門の先生方には大変感謝しております.この場を借りて厚く御礼申し上げます.