複合化・複雑化している病態を総合的に治療できる場とそれを実践できる医師|齋木 佳克

自身がコミットした患者の治療に携わるに際して、患者の病態と全身所見を詳細に捉え、総合的に評価し判断する必要があります。そのためには、医学的知識と経験の裾野を広げ続けることがまず大切です。そのことによって専門外の、ここでは心臓血管外科以外の医療についてアップデートされた考え方を共有でき、コンサルトした他科受診後の評価と治療方針を理解し、それを組み込んだトータルマネジメントが可能となるのです。
実際の医療現場においてさらにより重要なこととして、他科からの評価とコメントに常に疑問をもって解釈し最適な方針について議論することです。ここでの疑問は“疑念”とは異なります。他科の医師にとっては、心臓血管外科領域の患者特有の病態と術後経過に特有の病態特性を理解することは難しい場合があります。各領域の常識、ガイドラインに示された標準治療が心臓血管外科領域の個々の患者に必ずしも当てはまらないことがあります。そのようなギャップを埋めるための準備と行動として、幅広い知識を蓄積し続け、注意深い観察を怠ることなく常に疑問を持ちながら考察する、そして、優れたコミュニケーションスキルを持って他領域・多職種の医療スタッフと検討を深め治療を前に進めることが必要なのです。そのような医療を実践し修養する場を、私たちの診療科と病院には備えたいと希望していますし、十分ではないもののある程度備わっていると思っています。