ドイツ留学報告2019|片平晋太郎


2018年4月よりドイツ、デュッセルドルフ大学心臓血管外科へ研究留学をしています片平です。現在の留学および研究の進捗について報告いたします。

私は、糖尿病および腎不全ラットモデルを作りそれらに他のラットから採取した大動脈弁付き弓部グラフトを腹部大動脈へ移植し、PPARγagonistの移植グラフトに対する抗石灰化、抗動脈硬化作用について実験・解析を行なっています。プロジェクトに医学博士取得を目指している医学生を配属していただき、現在、3人のチームで研究を行なっています。私は主に動物実験を担当し学生には病理染色などの実験をお願いしています。ドイツ語でのコミュニケーションは本当に苦労していますが、学生や他のポスドクが色々と研究を手伝ってくれるので、私は動物実験に集中させてもらっています。
動物モデル作成はなかなかうまくいかず研究を開始して約半年後の2019年3月から、ようやく本実験を開始することができました。最初に手術をしたラット20匹が全滅し途方にくれましたが、うまくいかなかった原因が自分のテクニックではなく、グラフトの感染とわかり、感染対策をすることにより、その後の手術をなんとか完遂することができました。1つ目のプロジェクトである糖尿病ラットモデルの動物手術を9月に終え、11月からは2つ目のプロジェクトである腎不全ラットモデルを用いた実験に取り掛かっています。並行して学生が他の実験を行なってくれるおかげで、糖尿病モデルの解析が順調に進み、ドイツ循環器学会に演題を提出することができました。(しかし、残念ながら学会はコロナウイルスのため延期になってしまいました…)

また、一つ目のプロジェクトの動物実験が終了した11月からはGast Arzt(客員医師)として、実験の合間に手術に参加させてもらっています。正式なドイツ医師免許がないため術者はできませんが、第一助手までは許可されているため充実した臨床研修を研究と並行し行なっています。日本ではあまり経験をしたことがないMICS手術(デュッセルドルフ大学では僧帽弁手術の第一選択はMICSになっています)や基部の手術(David手術、脱細胞化グラフトを用いた大動脈基部置換など)を重点的に経験しています。日本ではまだ未認可のデバイスもあり非常に勉強になります。そして、参加させてもらった手術のケースレポートをAkhyari教授の指導で2本執筆させてもらいました。

以前に比べると環境適応能力が低下したと感じる今日この頃ですが、渡独した2018年に比べ、2019年はドイツ生活にも慣れ、本当に充実した留学生活を過ごしています。息子もドイツの現地校に馴染み、あっという間に私のドイツ語を追い抜きました。
コロナ騒動も含めた残りの留学生活については来年、報告したいと思います。今回の留学の機会を与えてくださった齋木教授をはじめ医局スタッフに感謝申し上げます。