オタワより2020|細山 勝寛


2016年12月よりUniversity of Ottawa Heart Institute (UOHI)、 Division of Cardiac Surgeryに留学させて頂いております。昨年7月にresearch divisionからclinicalに異動する機会を頂き、現在はfellowとして日々邁進中です。生活リズムの変化や言葉の問題に加えて、数年ぶりの臨床業務ということで当初はストレスを感じていましたが、慣れてくるにつれ、徐々に日本との違いを楽しむ余裕が出てくるようになりました。中でも特にその恩恵を享受していると感じるのは、医師の負担の少なさです。私自身のレジデント時代は週に80-100時間前後の勤務であったように記憶していますが、こちらでは平均で週60時間程度です。週休2日制で当直時間帯に入れば基本的にコールされることはありません。また年に28日間の有給休暇も取れるため、ワークライフバランスは非常に充実していると言えます。医師の負担軽減の理由の1つとして、職種の細分化があげられるかと思います。こちらではNurse Practitionerに加え、麻酔助手、呼吸療法士など様々な職種があり、看護師を含めそれぞれに付与されている権限も日本に比べ大きいように思います。また、心臓外科医にとって特に大きいのがIntensivistの存在です。麻酔科がローテーションで担当していますが、基本的には彼らがICUでの術後管理を行なってくれます。従って、術後ICUに患者を搬送したあとは、すぐそのまま次の手術の準備に取りかかれます。一般病棟患者の管理は我々resident/fellowの仕事となりますが、ここでも基本的な処方などのオーダーはnurse practitionerが入力し、また日中は病棟専門のdoctorもいて処置や急患対応などを行なってくれるので、手術中に病棟から電話がかかってくることはまずありません。このように、手術に専念できる環境で、毎日2例ずつの待機症例と週に1-2回の緊急手術をこなしながら、とても良い修練を積めていると感じております。

さて、そんな日々の中、2月頃からオタワも新型コロナウイルスの影響を受け始め、3月には緊急事態宣言のもと外出制限がかかりました。感染者数も当初はアメリカと同じペースで増え続け、近々ICU がパンクするという噂が流れた時期もありましたが、最近になりようやく沈静化の兆しが見られ始めました。幸いなことに私の勤務する病院はいわゆるハートセンターなので、COVID関連の患者はECMO目的に搬送された数例のみで、普段の診療の中で感染のリスクを感じるというようなことはあまりありませんでした。とはいえ、状況の悪化に備えて通常の待機手術は制限され、術前スクリーニングができない緊急症例などではN95マスクをつけて手術に望んだこともありました。病院外でのオタワのPandemicに対する反応は一様にseriousなように感じます。伝え聞く日本の情報に比べて重症感染患者の割合が大きいのがその主な理由かと思います。今回、カナダおよびオンタリオ州の対応はある意味潔く、感染拡大が本格化する前に外出制限が発令され、学校などは早々に閉鎖となりましたが、生真面目なオタワ人は愚痴を言いながらも耐え忍び、特にこれといった反対運動もなく、リモートワークなども含めうまく適応しているように思います。
オタワでは長かった冬もようやく終わり、いつもなら野外でのアクティビティーやイベントを1年分楽しむ季節となりましたが、今年はそのような機会が訪れるのはまだ先になりそうです。むしろ外出制限が解除となっても、あまり進んでレストランやバーなどにいく気にはなれないかもしれません。最近よく耳にする言葉ですが、Post-COVID時代の生活様式はこれまでと同様という訳にはいかないのかもしれません。

最後になりましたが、留学という貴重な機会を与えてくださった、齋木教授をはじめとする同門の先生方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。