私が、カナダのオタワにあるOttawa Heart Instituteに臨床留学してはや1年が経ちました。この留学に際しまして、齋木教授を始め様々な方々のご協力に深く感謝申し上げます。
今回はこのような報告の機会を頂きましたので、私がこちらでどのような生活をしているかを、書かせて頂きたいと思います。私の一日は、朝6時半〜7時くらいに病院へ出勤し、7時半までに回診を終わらせ、その日の指示を出します。基本的にはAttending surgeonとの回診はありません。何か問題があった際に相談する程度です。日中はHospitalist(Vascular Surgeryを引退した医師)が病棟を見ていてくれるため、手術中に呼ばれることは基本的にはありません。回診終了後、7:30に手術室にてchecklistという手術前の申し送りがあり、8:30頃から1件目の手術が開始となります。当施設にはStuff surgeonが8人程度おり、年間1500件以上の手術が行われますが、こちらの症例は驚くほどsimple caseが多く、場合によっては一日6〜8件の手術全てがCABGということも珍しくありません。手術で何をさせてもらえるかはその時次第で、場合によっては(極稀ですが)手術をさせてもらえます。基本的には手術はさせてもらえず、多くの場合、人工心肺のセットアップやIMAの剥離などを行います。1件目の手術が終わると、患者をCSICU(心臓外科専門のICU)へ搬送し、30分後に2件目のchecklistがあり、13〜14時頃に2件目の手術が開始となります。通常17時〜19時に手術業務は終了し、患者をCSICUに搬送後、病棟を回診します。その後、翌日の担当症例が入院していれば指示出しを行い、reviewしたのち帰宅となります。月〜金はおおよそこのような流れで働き、加えて週1〜2回程度ある当直業務をこなします。当直といってもオンコールなので、必ずしも病院内に泊まる必要はありませんが、17時から始まり21時ころまでは入院の指示出しやその他諸々の雑用などで、ポケベルがひっきりなしに鳴るのが通常です。加えてERに来る術後患者の対応や、循環器内科などからのコンサルトにも対応します。さらに月1〜2回はweekendのオンコールもあり、オンコール業務が私の仕事の大半ではないかと思うくらい、負荷が大きいのが現状です。心臓外科のレジデントは5〜7人程度おりますが、他科をローテーションする期間もあるため、その時のレジデントの数により当直回数が変わります。こちらのレジデントは良くも悪くも守られているため、全ての皺寄せは我々フェローに来てしまします(涙)。幸いコメディカルの方々は優しい方が多く、その方々のおかげで何とかやってこられたと思います。一方、オンコールでない場合は全く呼ばれないため、家族との時間を楽しむことができます。とは言いましても、オタワは小さな町なので、1ヶ月もすれば全て見尽くしてしまします。私の週末は、子供の日本語補習校への送り迎えや、コストコ(日本にもある大型スーパー)での翌週の食料の調達で終わるのが大半です。時にはモントリオール(オタワから車で1時間半程度)へ1〜2泊で観光しに行くことはありますが、オタワは一年の半年以上が冬ですので、そのような機会もそれ程多くはありません。ここまで読まれた方は、“その留学になんのメリットがあるの?”と思われるかもしれませんが、メリットもそれなりにあると思います。①度胸がつく、②色々な人のやり方を習得できる、③日本の技術レベルの素晴らしさを再確認できる、④家族との時間を作れる、などが挙げられます。一年間を通して、やはり留学はタイミング、留学先施設の状況、家族の協力が重要であると再認識させられました。今後は留学で得たものを多くの若手に還元していきたいと思います。