アルバータ | 高原真吾

2017年12月から2020年末までの3年間カナダのEdmonton にあるUniversity of Alberta、 Cardiovascular Research Centreへpost-doctoral fellowとして留学させていただきました。Edmontonはカナダの西海岸寄りのアルバータ州の中央にある都市で、仙台市とよく似た面積・人口を有する街です。都市としては世界でも最も北にある街で、非常に寒くなることでも有名です。街からたまにオーロラを見ることもできますし、2020年の冬には-50度を下回る日を記録し厳しい気候ではありますが、夏は非常に過ごしやすく、自然いっぱいのとても過ごしやすい街です。

齋木教授のご推薦のおかげで、University of AlbertaのJason Dyck lab。に配属されました。所属先研究室のPrincipal Investigator(PI)のDr。 Jason Dyckは心筋代謝の第一人者として、多数の論文を発表している研究者です。その流れで研究室のテーマとしては心筋代謝をメインにしておりましたが、私が参加してからは、心不全における炎症と全身の代謝、虚血再灌流障害のメカニズム、糖尿病治療薬(SGLT2 inhibitor)の心・腎保護作用とそのメカニズム、移植臓器への遺伝子治療の可能性、あとはカナダで大麻使用が解禁になったのを背景に大麻成分の抗炎症作用等、非常に多岐にわたるテーマに広げており、たくさんのプロジェクトに携わらせていただきました。比較的、実験機材と資金が豊富な研究室でしたので、思いついた実験はPIを納得させられるバックグラウンドの知識と技術さえあればなんでもさせてもらえるという、非常に贅沢な環境にいました。残念ながら最後の1年はCOVID-19の影響で実験は思うように進みませんでしたが、研究室のメンバーにも恵まれ、心臓血管外科とは関係ないものも多いですが、多数の論文に関与させていただくことができました。その他、AHAの基礎系の分会でありますBasic cardiovascular sciencesでの発表の機会をいただいたり、summer student、undergraduate studentやPhD studentの実験指導をさせていただいたりと、たくさんのことを経験させていただきました。特にmedical collegeを目指している学生の方々との交流は非常に刺激的でした。
残念ながら、アルバータ大学病院の厳しい内規とCOVID-19の影響で、臨床現場を見学・参加することは叶いませんでしたが、心臓血管外科のresidentを対象としたlectureなどには参加でき、カナダの心臓血管外科のresident、 fellowと話しをする機会には恵まれました。

研究以外の面でもこの3年間でたくさん学ぶことがありました。特にカナダは移民がとても多い国で、様々な国出身の人々から多様な社会・宗教・文化を彼らとの交流を通して学ぶことで、医療のみならず、日本の社会全体を今までとは違った目で考える視点が養われたと思います。さらに、Edmontonにはアルバータ大学への研究者の他に様々な産業の駐在員の方々も数家族(数えるほどですが)いらっしゃいまして、その方々との交流を通して、日本では学べない他業種のことも知ることができました。家族もそのようなコミュニティを通して日本人や現地の方々と情報交換し、また広く友達を作ることができました。そして何よりカナダの広大な自然は特に子育てにおいてはとても素敵な環境でした。

最後にこのような貴重な経験を与えていただき、齋木教授をはじめ同門の先生方には大変感謝しております。この場を借りまして御礼申し上げます。