2019年8月2-4日 Baltimoreで行われましたRASopathies symposiumにおいて私の学位のテーマになりましたNoonan症候群マウスの解析を発表してきました。RASopathiesというのはRAS癌遺伝子subfamilyの変異によっておこると考えられている、Noonan症候群、Costello症候群、CFC症候群、いわゆるLEOPARD症候群、神経線維腫症I型などの遺伝疾患の総称になります。今回私の学位におきましては、本学遺伝医療学分野にて発見されたNoonan症候群の新規原因遺伝子であるRIT1遺伝子に異常を持つマウスを作製し、その表現型、特に心臓に関して解析いたしました。Noonan症候群の患者は肺動脈弁狭窄症、心房中隔欠損症などの心奇形を持つ確率が比較的高いことが知られていますが、RIT1変異患者では肥大型心筋症が多いことが報告されております。今回RIT1 A57Gという比較的RIT1変異をもつNoonan症候群患者では頻度の高い変異を導入したマウスを作製し、変異マウスの表現型としてNoonan症候群に特徴的な顔貌変化や低身長などの表現型に加え、心筋肥大があることを証明しました。さらに特に交感神経刺激下においては心肥大、心線維化の傾向が非常に強くなり、AKTのリン酸化が亢進していること、mTOR-AKT pathwayの阻害によりその病理的変化を軽減できることを報告しました。
本会にはその前日までBostonで行われておりました、AHAのBasic Cardiovascular Symposium(BCVS)の発表からそのまま移動という形になりました。Baltimoreはその数週間前に記録的な大雨に見舞われていたようで、電車が途中から不通になっていたようですが、全くチェックしていませんでした。普通に空港からの電車に乗りましたが、特に何のアナウンスもなく、引き返し始め、果てには空港とは全然違う方向に向かってしまいました。途中で降りてUberで会場に行こうと思ったのですが、ご存知の通りBaltimoreは昨今治安が非常に悪く、大きな荷物を持っていたこともあり親切な他の乗客に途中で降りるのは危険だと教えてもらい終点まで行ってUberを呼ぶことになるというかなり前途多難なスタートになりました。Symposium自体は小さな会で、全部で恐らく50人前後、患者さんや患者さんの家族も参加する比較的カジュアルな会でした。それ故、議論はフランクかつ濃密に行われ、大変勉強になりました。残念ながらAHA‐BCVSとの抱き合わせの長い出張になってしまったので、symposiumの途中で帰ることになってしまい、観光なども何もできませんでしたが、学位テーマについてその道の専門の先生方とディスカッションでき、大変いい経験になりました。
本会参加についてご理解・ご協力いただきました、齋木教授、青木洋子教授、さらには留学先のPIであるDr. Jason Dyckを始め諸先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。