私は、2019年5月4~7日にカナダのトロントで開催されたAATS 99th Annual Meetingで、上行弓部大動脈人工血管置換術における末梢側吻合方法の一つであるModified Cuffed Anastomosisの有用性について、Resident Poster CompetitionというResidentを対象としたポスターセッションに採択されましたので報告してきました。会場はトロントのMetro Toronto Convention Centreという大きな会場でした。
各セッションにおいては、多数の有名な施設、心臓血管外科医が予定されており、行く前からどの部屋で拝聴させてもらえばいいか悩んでしまうほどでした。今回のセッションでは経皮的大動脈弁置換術のセッションが比較的多くあり、また、冠動脈バイパス術のグラフト選択での議論など日本の学会においてもよく議論になるものや、日本ではまだ採用されていないような医療機器を用いた手術の成績報告といった海外学会ならではの報告も多数あり、現在の世界での心臓血管外科手術の動向を勉強することができました。
私自身の発表はポスターセッションであり、その周囲はすべてResidentの方々のポスターでした。発表形式は特に座長などがいるわけではなく、AATS memberの方々が一定の時間内にランダムに来て質問があれば質問し、short presentationを求められればプレゼンをするといった少し経験のない形式のものでした。いつだれが来るかよくわからないためはじめは勝手がよくわかりませんでしたが、徐々にポスターを見に来てくれる方々が気さくに質問してくださり、また今の日本の大動脈手術事情などを議論したりと、ただ発表の経験だけでなく、英語での会話や議論を経験、勉強もすることができ非常に有意義な時間でした。ただ、当然のことながら今回の国際発表においても自分の英語能力の不足を痛感しました。またほかの有名施設のResidentの非常にきれいなポスター構成などまだまだ力不足を感じることもできました。
また、今回はなぜか行きの飛行機に乗った後に過去に治療した歯が痛むというアクシデントがありました。はじめは薬局で買った本当に大丈夫かよくわからないNSAIDsやアセトアミノフェンを飲んでしのいでいましたが、学会後半となると下顎がしびれるほどの激痛に見舞われたため、初めて海外で歯医者にいくという経験もしました。中学校の教科書に出てくるようなシチュエーションにまさか自分がなるとは思いませんでした。一番心配だったのは、いったい海外で保険なしでの歯科治療費はどのくらい高額なのかが心配でした。今回わかったことは海外旅行保険というのは基本的には歯科治療は対象外だということです。事前に初診はいくらかかるのか、どこまで治療をするか、より深い治療が必要な時はその時金額がいくらになるのか教えてくれるかなど、トロントでの勝手がわからない中事前にくどく交渉したところ非常にやさしく教えてくれました(日本人はけちでうるさいとも思われたかもしれません…)。
以上、私の変な経験の内容も入りましたが、総じて今回の学会を参加して、よりこれらの学会にまた採択を目指していきたいと強く感じました。採択率の低い学会ですが、ここで見てきたほかの発表者のプレゼンテーションを参考にして今後も学術活動を頑張っていきたいと思います。