ドイツ胸部外科学会|鈴木 智之


2019年2月、ドイツ胸部外科学会(DGTHG)で発表する機会を得ました。海外の学会は3度目、2013年のヨーロッパ胸部外科学会(EACTS)以来であります。もともとドイツ語が好きでしたが、EACTSでウィーン~ドイツを訪ね、それ以来本格的に勉強を続けていました。ドイツには何度も行っていますが、今回は4年ぶりで、期待と興奮、不安をかかえながら一人早朝のヴィースバーデンに着きました。

フランクフルトから1時間もかからないくらいのアクセスのいい場所で、「バーデン」の名のある通り、温泉のある保養地です。ドイツでは3年間同じ土地で開催されるようです。前半2日用に予約した駅近くの新しいホテルにチェックインしようとしたら、なんとシステムのミスで部屋がないとのこと。近くのマインツにある同系列のホテルに部屋を確保したのでそちらへ行ってくれとのこと。結果的にホテル代はとられませんでしたが、マインツからタクシーで通うはめになりました。会場のラインマイン・コングレスセンターはできたばかりでとても新しく、快適な施設でした。初日にデュッセルドルフに留学中の同期入局の片平氏と合流し、オープニングセレモニー後の会場内でのパーティで近況報告を行ったり、デュッセルドルフのラボの仲間を紹介してもらったりして盛り上がりました。ドイツでは大きな学会が年に一度で、ドイツの心臓血管外科医同志もここで旧交を温めたり、少し羽根をのばしたり、お祭りのような雰囲気があります。翌日は発表を聴講しました。基礎研究に関するものも多く、アカデミックな雰囲気で、討論も活発です。ドイツ語なので半分くらいしか分かりませんでしたが、流暢な発音を聞いているだけで心地よいものでした。夜はデュッセルドルフのチームの飲み会に混ぜてもらい、会話を楽しみました。3日目に自身の発表を行いました。4分のほどのプレゼンテーションに2分ほどの討論という短めの設定で、内容は仙台厚生病院在任中のオープンステントグラフトに関するものでした。ドイツ語で準備していたのですが、つい発表前に「日本人で日本から来て・・」という言い訳がましいことを言ってしまい、座長からは「英語でいいのだよ、英語にしたら?」と提案されました。しかしそこは意地でドイツ語やることにし、練習通りにはいきませんでしたが、何とかやりきりました。その日の午後は由緒ある混浴温泉にゆっくりつかり、体と心を癒しました。夕方、会場近くでネパール出身のドイツで働いている心臓外科医に話しかけられ、僕もしばらく言葉で本当に苦労したから君の状況はすごく分かる、でも立派だったよ、何かあれば連絡下さいと励ましの言葉をもらい救われた気持ちになりました。また、この期間中にフライブルク大学の教授との再会・面談がかなったことも私にとって大きなこととなりました。

ドイツの2月はまだ寒く、天候もあまりよくありませんが、ヴィースバーデンのあるライン川沿いの地帯はラインガウと呼ばれ、ドイツの中でもワインのおいしい地域です。良質の辛口の白が楽しめますし、ピノノワール系の赤もおいしいです。最終日の夜更け、名残惜しさにアイリッシュ系のパブを訪れました。男しかいないことに何の違和感も覚えませんでしたが、しばしたってマスターから「ここはどういう店だか知っているか」との一言が。ゲイバーでした。しかし、あぶないことは何もなく、インテリジェンスの高いイケメンもいて、結果楽しい締めとなりました・・

今回このような貴重な機会を与えて下さった齋木教授および医局の先生方、仙台厚生病院の先生方に深く感謝申し上げます。