ASAIO 2017 in Chicago|秋山 正年


最近可能な限り演題を出して参加しようと思っている、アメリカ人工臓器学会(ASAIO)なのですが、限られた都市のrotationで開催されています。2013年以降演題を出しているのですが、2013年Chicago, IL、2014年Washington DC、2015年Chicago, IL、2016年(珍しく)San Francisco, CA(不参加)、そして2017年Chicago, IL。Chicagoは留学中にも一度訪問しており、4回目です。今回は定常流型LVAD患者における慢性期腎機能障害についての自験例報告です。外来でなんとなく、1~2年経過した患者のCrが高いという印象を持っていたのですが、データを見直すと腎機能障害が進行していることに気が付き、演題を出しました。しかし、同時期にJournal of heart and lung transplantationに定常流型LVADの術後3年の腎機能についての論文が出され、みな同じように気が付くのだなと思いつつもとりあえず発表はしました。

ほぼ毎年、ASAIOやHeartMate II users meetingで訪米しているのですが、今回は何故か時差に対応できず、午後のセッションをちょっと聞いて後はホテルで爆眠という状況が2日続きました。幸い発表の日までには何とか体調を戻し、後半2日はフル参加ができました。ということで、後半2日間の演題しかあまり記憶にないのですが、興味深いテーマとしては、高齢者の重症心不全には心臓移植とLVADどちらがbetter?でした。アメリカでも10年前とは比較にならないほどLVADが普及したことで、ドナー不足がより深刻となり日本同様に移植待機期間が延長しています。植込み型LVADで最も頻度の高い合併症であるドライブライン感染ですが、日常活動度の低い高齢者では、若年者よりもその発生率は低いという報告もあるほどですから、脳血管障害、大動脈弁逆流、右心不全などが生じない限りは、意外と長期にわたり安定した生活ができるということも事実です。つまりLVADで安定している患者に、waiting listで順番が来たから心臓移植にするか?というテーマです。心臓移植後も免疫抑制剤の問題はあり、complianceが大丈夫なのか?本人だけではなく家族の治療に対する理解度が求められるわけです。移植 or LVADだけで十分すぎるくらい熱い討論が行われていました。日本でも近い将来destination therapyが導入されると思われますので、より身近にこのテーマを考えていく必要があると思われました。

さて、今年もASAIOの演題が通りました。開催地は(またもや)Washington DCです。今年は消化管出血のテーマで発表です。游心会誌が出るころ今年のASAIOは終わっていますが、来年もまた学会参加の医局便りがあるでしょうから、学会でのテーマを記録に残して来年に備えたいです。