2017年11月11日から11月15日までアナハイムで開催されたAmerican Heart Association (AHA) 定期総会に参加させて頂きました.Ottawaでresearch fellowshipを開始して約1年というタイミングでしたが,こちらでの研究テーマが少し形になり始めたところでabstractを提出し,poster sessionではありましたが幸運にも採用され,今回初めての参加となりました.
発表内容は「電気伝導性ナノマテリアルを用いた心筋再生足場による心筋梗塞治療」でした.近年,幹細胞を用いた再生医療分野では,特に心筋梗塞治療において細胞単独での治療の限界が示唆されており,遺伝子導入やgrowth factorの配合,様々な足場素材との組み合わせなどが提唱されています.私のテーマもこういったアプローチの一貫で,excitable tissue componentにおいて自己組織での電気伝導性を模倣した細胞外基質が組織再生を促進する,という報告に基づいて素材構成から始まりました.これまでにも伝導性素材による心筋再生というのはvitroの報告は多数ありますが,素材自体のpropertyやサイズ・濃度などからbiocompatibilityの点で制限があり,in vivoでの報告はほとんどないのが現状です.我々のグループではコラーゲンコーティングによりナノメタルを作成することでその使用濃度を抑えると同時に高いbiocompatibilityを実現し,またelastic hydrogelと組み合わせることでcardiac patchとしてのimplantを可能にしました.Preliminaryなデータではありましたが,マウスMIモデルでもEFの改善を認め,数人の方からconceptに関して賛同を得ることができました.ナノサイズで低濃度とはいえ,やはり投与後の分布やside effectに関して懸念が残る,といった意見も頂き,今後の実験構成を再考する良い機会となりました.
学会自体はやはり内科関連がメインで,外科のセッションはわずかでしたが,それでもMICSやTAVIなどのhot topicsに関して様々なleading centerからの発表があり,論文だけでは知り得ないknacksなど大変興味深いものばかりでした.また,basic scienceではstem cell therapyのみで1日抑えたセッションがあり,多くの著名な先生方がパネリストとして参加され,まさにcutting edgeな議論を拝聴することができました.心臓領域では最も大きな学会の一つというだけあり,多くの刺激を受けて帰途につきました.
今回このような海外発表の機会を得ることができたのも,海外留学という機会を与えてくださった齋木教授を初め当科の先生方のお陰と存じます.この場を借りて感謝・御礼申し上げます.今年もまたabstractの提出期限が近づいてきています.また来年この場で報告できるよう,研究に邁進したいと思います.