EACTS参加・発表を経験して|細山 勝寛

2016年10月1日から10月5日までスペイン・バルセロナで開催された第30回ヨーロッパ心臓胸部外科学会(European Association for Cardio-Thoracic Surgery: EACTS)定期総会に参加させて頂きました.

近年では国内の学会でもMICSやTEVARなど低侵襲手術に関する発表がその多くを占めるようになっていますが,EACTSではin situ debranchingやMIAVR+TEVARなどさらにchallegingな手術でもかなりの症例数を集めた報告が多く,とても興味深く拝聴しました.中にはあまりにchallengingであるため,日本では今後も施行されることはないであろう手術もありましたが,それらの幾つかは今後改良を重ねることで近い将来新しいstandardになる可能性もあり,躊躇なく新しいものを取り入れfeed backを繰り返すという姿勢にはただただ驚くばかりでした.

私自身は「生体吸収性素材を用いた大動脈吻合部補強フェルトの安全性と有用性評価— 傾向スコアマッチングによる遠隔期成績の比較検討」という演題で口頭発表を行いました.発表時間は3分と非常に短く少し気楽に構えていましたが,前日に会場の下見に行ったところ,演者は360度を聴衆に囲まれており,まさにTEDさながらのステージで発表するということが判明し,緊張が倍増しました.当日もぎりぎりまで齋木教授に読み原稿をチェックして頂き,予行を重ね,なんとか無事に発表することができました.演台にもたれてPCモニターと向かい合って発表するのとは異なり,なんとも言えない居心地の悪さがありました.その後の質疑では,feltのdurabilityや遠隔期における病理像などについて幾つかの質問を頂きましたが,座長のBachet先生は良い印象を持ってくださった様子で,比較的和やかなムードのまま発表を終えることができました.その後,数時間ではありましたが市内観光の時間も取ることができ,緊張から解放されようやくバルセロナの色彩豊かな街並みを堪能することができました.

今回初めてのEACTSでしたが,世界のleading edgeで活躍する先生方と接することで,グローバルに評価される仕事をするということの魅力に大きな刺激を受け,今後の自身の研究・臨床への取り組みについても意を新たにした次第でした.
最後になりましたが,今回このような海外出張・発表の機会を与えてくださった当科の先生方にこの場を借りて感謝・御礼申し上げます.特に,今回の発表は諸先輩方の膨大な基礎実験・臨床研究の成果の賜物であり,貴重な機会を頂き大変感謝しております.アイデア・抄録の段階から発表原稿のチェックに至るまで,懇切丁寧にご指導頂いた齋木教授,渡航準備を含め様々な調整をして頂いた秘書の皆様にも深く感謝致します.ありがとうございました.