Mayo clinic訪問|高原 真吾

私は現在、大学院の課題として遺伝医療学分野にて先天奇形症候群に伴う肥大型心筋症に関して研究を行っております。Mayo clinicは肥大型心筋症の左室流出路切除を非常に多くの症例で行っており、その心筋の組織学的解析など多くの研究結果を発表しており、肥大型心筋症のメッカとも言える施設です。そのような関係で、Mayo clinicの心臓外科医であるDr. Simon Maltaisに齋木教授がコンタクトを取ってくださり、小児循環器chiefのDr. Michael Ackermanにお会いする機会をいただくことになりました。ちょうどAATSの時期であったため、AATS会期の後にMayo clinicを訪問することになりました。

齋木教授のご高配でBaltimoreにて行われました第96回AATS本会にも参加させていただくことになりました。Baltimoreでは何のアナウンスもなく予定の時間を1時間過ぎても電車が来ないなど、日本では考えにくいことが様々起こりましたが、無事に滞在先にたどり着くことができました。学会では、先天性のセッションを中心に早朝から夕方までほぼ終日学会会場に入りびたりました。以前に比べると幾分か英語でのpresentationにも慣れ、内容を捉えることができるようになったため、最先端かつ多様な演題のdiscussionを楽しんで拝聴することができ、様々な知見を得ることができました。

Baltimoreでの学会の後Chicago経由でMinnesota州Rochester空港へ向かいました。Rochesterという名の空港は実はニューヨーク州にもあり、むしろそちらの方が主要空港として有名で、Minnesota州のそれは非常に知名度が低いようでした。Chicago空港の職員ですら、‘そんな空港知っているか?’という会話が聞こえてくるような状況で荷物が無事に着くのか非常に不安になりました。国際空港ではありますがとても小さな空港で、夜中に到着したのですが、空港周囲には明かりが全くなく、まさにアメリカのcountry sideを絵にかいたような場所でした。

Dr. Ackermanとの面談は到着の翌々日の予定でしたが、急遽翌日の昼へと変更となり、プレゼンの準備を朝から行い、Mayo clinicの外来の一室をお借りして遺伝科での活動などをプレゼンさせていただきました。Dr. Ackermanは非常に温厚な雰囲気の先生で忙しい中であったと思いますが、じっくりと興味を持って話しを聞いて頂けたように思います。今後Mayo clinicと協力して研究ができる期待を持てる反応であったと感じています。

その後はMayo clinicおよびRochesterの見学を行いました。Rochesterは、その街にはMayo clinic関係者と、患者、そしてその家族以外ほとんどいないといわれるように、病院で成り立っている小さな街でした。Mayo clinic自体はいくつもの建物があり、街全体に広がっている病院です。この病院はMayo兄弟が1889年にセント・メアリーズ病院として開院され、今日の外科手術の基礎を築いた非常に歴史ある病院です。ご存知の通り、これまで多くの優秀な医師を輩出しております。病院内には古い開院当初のものなども展示しており、医学の歴史を感じられる施設でした。

翌日はDr. SchaffおよびDr. Maltaisの手術を見学させていただきました。HOCMの左室流出路心筋切除、及びMICS AVRを見ることができ、また病棟の回診もご一緒させていただき、アメリカの医療の一端を垣間見ることができました。また、共通の知人のいる日本人fellowの先生もいらっしゃり、世間の狭さを感じるとともに、年齢の近い日本人医師がこのような世界的なleading instituteで奮闘している姿に非常に刺激を受けました。

一週間余りの長期の滞在でしたがAATSへの参加もさることながら、世界でも最も歴史ある病院のひとつであるMayo clinicを見学でき、また研究のプレゼンを行う貴重な機会をいただき、齋木教授をはじめ、不在の間業務を補ってくださいました諸先生方には大変感謝しております。この場をお借りして御礼申し上げます。