2016年AATS報告書|神田 桂輔

2016年のAnnual Meeting AMERICAN ASSOCIATION FOR THORACIC SURGERY(AATS)はアメリカ東海岸の古都ボルチモアで開催されました。96回目を数える権威ある学会で、世界中から参加者が集う、まさに国際学会という場で、幸運にも口頭発表をする機会を頂くことになり、齋木教授に率いられ、乗り込むこととなりました。

ボルチモアは歴史ある港湾都市であり、風光明媚な海岸線と洗練された港湾地区、近海で捕れた海の幸が印象的であり、また会期前日にはMLB観戦にも出かけることができ、数日訪れるには程よい都市と感じました。個人的には同行した高原先生と食べたクラブケーキというアメリカ伝統料理が大変美味であり、アメリカの印象を変えられる体験でした。

さて、本題の学会ですが、広大な会場で、現在の心臓血管外科のtop runner達がdebateを繰り広げており、最新の知見やconsensusとはこのような場所から生まれていくのか、とじっくり聞くには聞いていました。そして、同時に自分の語学力の拙さを悔やみ、日本の英語教育を呪う、その繰り返しで会期が過ぎて行きました。

今回、私が発表する機会を頂いたのは、虚血性脊髄障害に対する脳脊髄液酸素化による脊髄保護法の開発、というテーマでした。大学院時代の仕事の集大成であり、あのような場で発表できることは、今に思えば大変栄誉なことでしたが、その時の私は余裕などなく、ただただ無事に終わることを祈るのみでした。午前7時からのセッションで、audienceはまずまず、指定討論の先生も良心的な方で、齋木教授の多大な御助力もあり、なんとか切り抜けられました。反応の様子を窺う余裕もありませんでしたが、齋木教授の「悪くなかったぞ」の一言が慰めでないことを願うばかりです。そして、発表の様子が、後日JTCVSの論文の末尾に掲載されてしまっていることも痛恨の極みでありますが。

アメリカでの国際学会の参加は初めてであり、高名な先生方を目撃して浮かれてしまったりと、刺激的な数日間でした。またチャンスがあれば参加してみたいものだが、発表はまた力を蓄えてからというまでに留めておきたいところです。