海外学会発表|神田 桂輔


今回参加したアジア心臓血管外科学会は今年で23回目を数え、今年は香港の地で行われました。アジア諸国からの参加はもちろんのこと、東欧や北米からの参加もあり、またpostgraduate schoolでは世界に名だたる著名な医師の講演が予定されるなど、大会前から毎年注目を集める学会です。参加者の内訳は開催国の中国の他にはやはり日本からの演題が多く、国内でも高名な施設や大学からの発表が続きました。一方で、近年目覚ましい高度の成長を遂げている中国からの発表も非常にユニークなものもあり、医療分野においても勢いを感じさせるものでありました。しかしながら、アジアという地域は広く、また国家間の発展度や宗教上の違いもあるのでしょうか、アジア全体の国家数からいうと、一部の国に参加が限定されていたようでもありました。

今回、私が発表に選択したのは胸腹部大動脈瘤手術の際の肋間動脈再建法に関する考察でしたが、非常に高度な侵襲と合併症、手術手技の複雑さなどが常に問題点として挙げられ、絶えず議論が尽きない内容ではありますが、日本以外のアジアという地域を鑑みると、まだ胸腹部大動脈瘤手術に対する医療上のニーズや挑戦という面では重要度が低いのかもしれず、もっと一般的な手術の成熟を待った上での議論になるのかもしれないと感じました。我々以外の胸腹部大動脈瘤手術に関する演題は1題しかなく、淋しい限りでありました。

そうはいっても国際学会であり、最新の知見に触れる機会も多く、国内では保険診療の壁に阻まれている、本邦未承認のデバイスやツールに関する発表には印象的なものも多く、日本における承認が待たれます。また、そのようなヨーロッパや北米で盛んに取り入れられている新たなデバイスとよく似たものを中国の国内企業が製造して、中国国内で使用しているという現状には大変驚かされました。特許などの面での懸念や臨床研究の存在などは、非常に心配となるところであり、同様の指摘を行う質問も飛んでいたようでしたが、お国柄なのか、新興勢力の勢いなのか、今後もこの流れが続いていくのかもしれません。このような経験は国際学会ならではかもしれないとも思いました。